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弊社は、「ご高齢者が思い出を語りやすい社会づくり」に貢献することを目指しています。
ご高齢者の共通した昔懐かしい時代体験を絵に描き、ご高齢者と介護職員様、またご高齢者様同士のコミュニケーションを通して、脳の活性化による認知症進行抑制を図り、介護の質と介護者の生活の質の向上に取り組んでいます。


2012年には、齋藤やよい先生(東京医科歯科大学)との共同研究(「ミッケルアートによる脳活性化」)を行い、その成果を今年度の日本認知症ケア学会で発表して石崎賞を拝受いたしました。
2013年度は、全国老人福祉施設協議会助成事業として、今井幸充先生(和光病院)、齋藤やよい先生(東京医科歯科大学)、永田久美子先生(東京認知症研究研修センター)にアドバイスをいただきながら、ミッケルアートによる回想療法の研究を行い、認知症の行動・心理症状へ有効性が示唆されました。


    <論文発表>
  •  2014年8月 回想療法としてのミッケルアート. 日本早期認知症学会誌 第7巻 第2号, 2014
  •  2015年3月 回想療法としてのミッケルアート-エビデンスの確立に向けて-. 病院設備.第57巻第2号,2015

    <研究報告書>
  • 「ミッケルアート(昔懐かしい絵画)による回想療法の数値評 価・検証」
  • 公益社団法人全国老人福祉施設協議会 老施協総研 平成25年度調査研究助成事業報告書 2014;5-6.

    <受賞暦>
  • 2013年 日本認知症ケア学会 石崎賞
  • 2014年 日本認知症予防学会 浦上賞

    <講演実績>(敬称略)
  • 全国老人福祉施設協議会、日本リハビリテーション専門学校。石川県認知症ケア専門士会、医療法人 徳洲会
  • 長寿社会文化協会WAC、神奈川県公益社団法人かながわ住まいまちづくり協会

    <研究内容>
  • <日本認知症ケア学会 2013年 石崎賞受賞>
  • ミッケルアートによる脳機能活性の効果 ~ミッケルアートを活用した 認知症ケア検証のための基礎研究~

発表者 橋口論 静岡大学発ベンチャー企業・株式会社スプレーアートイグジン
富谷理子、大河原知嘉子 / 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科
大黒理惠、齋藤やよい / 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科


【目的】絵画(ミッケルアート)を用いた認知症ケアの効果検証の基礎研究として、絵画による生理的・心理的影響を脳血流量、眼球運動、および主観的評価から明らかにする。

【方法】健康な成人女性8名を対象に、色やモチーフが多くストーリー性のある小学校校舎の風景を描いたミッケルアート(スプレーアートEXIN製)を見てもらい、脳機能活性の変 化を実験的に調査した。実験は温湿度、照度を調整した同一環境で行い、測定は脳血流量 (頭部近赤外光計測装置、日立HOT121B)、眼球運動(アイマークレコーダー、 NacEMR-9)により行った。主観的評価は絵画への嗜好、見て感じたこと、覚えていることなどの自由記載内容分析により行った。

【倫理的配慮】公募に応じた対象者に、研究方法、個人情報・秘密保持等の説明を行い、 本人の自由意思により参加してもらった。方法はすべて非侵襲的であり、申し出によりい つでも中断、棄権できることを説明した。

【結果】絵画に対して「リラックスする」「生き生きする」「元気いっぱい」「活気がわ く」と感じた快適群4名では、絵画を見たことで左脳血流量は0.22mM-mm、右0.24 mM- mm変化したが、感じなかった非快適群4名では左-0.1 mM-mm 0、左-0.09 mM-mmであ った。眼球運動は、0.2秒以上の注視の総数、および回数に違いはなかったが見方には違い があり、非快適群は偏りなく注視するのに対し、快適群は絵画中の特定の場所を有意に長 く注視した。また、自由記載の文字数・項目数も快適群に多かった。

【考察】絵画を快いと感じて注視し、何かを想起・記憶することを通して、脳血流量は増 加し、語りの文字数を増加させる効果があることが明らかとなった。意識的に対象の好む情報を取り入れた絵画を提供し、効果的に注視を誘導ことが脳機能活性につながることが 示唆された。



<日本認知症予防学会 2014年 浦上賞受賞>


「ミッケルアート(昔懐かしい絵画)による回想療法の数値評価・検証」 に係る検証事業 (報告書サマリ)

    1. ミッケルアートとは
  • 筆者(橋口論=研究責任者)は、高齢者が自分らしく生き生きと暮らせる社会にするためには、コミュニケ ーションの機会と場づくりが重要であると考えた。そこで、従来の回想療法のツールの良い特徴を集約し、 高齢者が回想しやすいコミュニケーションツールとして昔懐かしい絵画「ミッケルアート」を開発した。介 護施設に入所している高齢者は、75 歳から 95 歳の年齢層が多く、回想対象の時代とは、大正から昭和 30 年代に当たる。ミッケルアートでは、高齢者が「懐かしく思い出す」回想の営みを効果的に促進するため、 絵画の題材として、例えば、茶の間など、当時の日本の生活に伝統的な風習を意図的に描き、同時に、隠し 絵的に配置された動物、教科書などのアイテムを「見つける」というクイズ性を付加している。(図1
  • 2) これは、懐かしい感情こそが興味関心・意欲を引き出して脳機能の活性化を促すからである。ミッケルアートは、高齢者が自発的に会話をしやすいコミュニケーションツールであり、介護職員がご高齢者の視点や立場に立って理解し、ケアを行う事で、BPSD緩和による認知症進行抑制、要介護状態の悪化の進行抑制に有効であると考える。

    2. 事業目的
  • ミッケルアートの回想療法によって認知症高齢者の行動・心理症状(以下、BPSD)、及び認知症高齢者の日常生活自立度(以下、認知症自立度)及び障害高齢者の自立度(以下、寝たきり度)への効果を検証する。

    3. 研究方法
  • 2013 年 8 月 15 日~2014 年 1 月 31 日に、特別養護老人ホーム 9 ヶ所、デイサービス 16 ヶ所、グループホ ーム 4 ヶ所、ケアハウス 3 ヶ所において、104 人の認知症高齢者(要介護 1~5、認知症自立度I~M、寝た きり度 J1~C2)を対象に介入を行った。
  • ファシリテーターとなる介護職員 1~2 人に対し高齢者 6 人以下の 人員配置で、週 2 回程度(1 回あたり約 20 分間)のグループワークを行い、高齢者の認知症自立度、寝たきり度、BPSD を認知症行動障害尺度(以下、DBD)、センター方式(焦点情報)により記録した。また、一部の高齢者に対して、グループワークにおける会話の逐語分析を行った。

    4. 研究結果
  • 4-1 BPSD 緩和効果の結果
    表1a に DBD による評価点数の 2 時点間の差の平均値を示す。差は、いずれのケースでも、時間経過で 「後」の評価値から「前」の評価値を引くことによって求めた。例えば、1に関しては、「1 ヶ月後-介 入直前」である。また、表 1a は、取得した全データ、表 1b は4時点の全てで取得できたデータに限定 して算出した結果である。

  • 1 介入直前と比較し、介入開始から 1 ヶ月後は 1.23 点改善した。統計分析の結果、有意水準 1%で有意な差が認められた。


    2 介入直前と比較し介入開始から 3 ヶ月後は 1.55 点改善した。統計分析の結果、有意水準 5%で有意な 差が認められた。


    3 介入終了直後と、介入終了から1ヶ月後を比較すると 0.00 点であり、変化は認められなかった。このことは、この間の変化の幅は小さく、従って介入の効果が維持されたことを示唆する。


    4 介入前と介入終了から 1 ヶ月後を比較すると 1.47 点改善した。統計分析の結果(図 7d、表 2d)では 有意な差は認められなかったが、57 のデータの中で負が 34、正が 16、ゼロが 7 であり、明らかに負のデータが多く含まれている。そこで、正、負のデータ数を用いた符号検定を行った結果、負の個数 に関しては z=2.404、p 値=0.016<0.05 となり、有意水準 5%で負のデータが多いとの結論を得た。な お、図 7d には、分布の右端に大きな値 30 が1つだけ現れており、そのデータは、検証前から若差の検定でも水準 5%で有意差が認められた。




      5. 研究アドバイザーの考察 (東京認知症研究・研修センター 永田久美子) 5-1 介入終了直後と介入終了から 1 か月後の比較:継続的取組みの重要性

    • ミッケルアートの回想療法による介入を継続していた期間中は、DBD(平均点)の低下傾向がみられたが、 介入終了時と終了 1 か月後を比較すると DBD(平均値)は上昇傾向に転じていた。ミッケルアートの回想療法 による介入を継続することが BPSD の緩和に一定の効果があることが示唆されたといえる。高齢者が日常の中 で、ミッケルアートを用いて回想を行う時間を継続的にもてるように、職員側の意識や業務の流れを意図的 にかえていくことにより、高齢者の安定と職員の BPSD 対応の時間を減らす(負担軽減効果)が期待できる。

      5-2 言語の量・質の変化:人間的な感情を喚起し、自立度の向上や状態の安定、生活の質の向上の好循環を もたらす効果

    • センター方式 D-4 を用いて、ミッケルアートの回想療法による介入期間中の対象者の言語(ありのままの 言葉)の記録を継続したところ、対象者の自発的な言語量が増加していることが確認された。また言語内容 についてみると、介入前の否定的で断片的な内容から、懐かしさ、楽しさ、喜び、意欲に関する前向きな内 容が一連の文脈をもって語られるように変化していることが確認された。このことから、ミッケルアートの 絵の 1 枚 1 枚をみることが、安らぎや懐かしさ、人間的で豊かな感情を喚起する効果があることが示唆され ている。また回想療法の時間内のみでなくその後の生活時間帯でも、回想に関連した行動を自らやりたいと いう意欲が維持され、自発的な行動が生じていた。自分でやってみたい→やってみたらできる(自立度の向 上)→自信の蘇り→状態の安定(BPSD の減少)→全体としての生活の質の向上という、一連の変化(好循 環)の可能性が示唆された。認知症が進み、特に施設生活を送るようになると、人間的な感情を喚起する機 会が減り、自立度の低下、BPSD の頻発、生活の質の低下という負の悪循環に陥りやすいことが各方面から指 摘されてきている。今回のミッケルアートを用いた回想療法は、比較的短時間・簡易な方法で、認知症の人 が陥りやすい負の悪循環から脱却できる効果が期待できることが示されたといえる。

      5-3 マンネリ化を防ぎ、職員の気づきやアセスメント、ケア、やりがいの向上をもたらす効果

    • 長期にわたる認知症の人の介護に携わる職員は、日常の中で一人ひとりの高齢者の豊かな感情や個性、有 する力を見落としやすくなる問題が指摘されている。今回、ミッケルアートによる回想療法を通じて、職員 は高齢者の活き活きした言動にふれることができ、職員自身の新鮮な気づきや喜び、認知症のある高齢者へ の見方や関わりの変化をもたらしていた。ミッケルアートを用いた回想療法は、短時間で簡便な方法で、認 知症ケアの現場の職員が陥りやすいマンネリ化を防ぎ、気づきやアセスメント、ケアややりがいを向上させ る効果を期待できるといえる。

      5-4 日常の生活のディテイル(些事)に注目したケアの質の向上の効果

    • ミッケルアートの特徴のひとつとして、1 枚 1 枚の絵の中に日常生活風景のディテイル(些事)が描かれて いることがあげられる。
    • センター方式 D-4 の記録を分析すると、対象者は漠然とした回想ではなく、ミッケ ルアートのディテイル(些事)に触発されて、自分自身のかつての生活の細部にわたった記憶を蘇らせてい た。細部にわたった記憶が語られたことで、職員はそれに連動した会話をつなげやすく、日常の中で個々の 人の言葉(個性)に合わせた具体的な支援に展開していくシークエンスがみられた。認知症の進行に伴い、 本人の個性や意向をとらえにくくなり、画一化したケアに陥りがちなケア現場の現状を打開し、ケアの質の確保・向上をはかるために、今後ミッケルアートがケアの現場に幅広く普及していくことが望まれる。

    結論


    介護施設における高齢者の BPSDと認知症自立度及び寝たきり度に対し、ミッケルアートによる回想療法が症状の維持・改善に効果があり、これによって生活の質の改善・向上を図る方法として一定の有効性を持っていることが示唆された


    • 研究責任者 及び 研究アドバイザー
    • 橋口論 (静岡大学発ベンチャー企業・株式会社スプレーアートイグジン)
    • 齋藤やよい (東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 教授)
    • 大河原知嘉子 (同大学大学院 院生)
    • 永田久美子(東京認知症介護研究・研修センター)
    • 今井幸充(医療法人社団翠会 和光病院 院長)
    • 山田文康 (静岡大学大学院情報学研究科 教授)
    • 宇佐美好洋 (帝京平成大学健康メディカル学部作業療法学科 助教)

    公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 老施協総研 平成 25 年度調査研究助成事業 による助成を受けて実施


    • <論文発表>
    • <日本早期認知症学会誌 第7巻 第2号, 2014>

    • 回想療法としてのミッケルアート
    • 橋口論1]

    • MIKKEL ART as a recollection therapy
    • Rin Hashiguchi1]

    「抄録」今日の介護•医療現場では、高齢者と年齢差のある介護者の接する機会が増えている。コミュニケーションの活性化は、高齢者の閉じこもり等を予防抑制して生活の質の向上に資すると同時に、高齢 者と介護者との世代間ギャップを埋めることができる。本稿では、世代間のギャップの改善を踏まえたコ ミュニケーションツールとして、昔懐かしい絵画の作成ならびに提示方法に工夫改善を施し"ミッケルア ート"として提案する。ミッケルアートの 4 つの特徴として、1思い出しやすい題材の選択、2見つけたい意欲を喚起するクイズ性の付加、3題材が見やすい描写の工夫、4介護者が使用する際の留意事項の例 示の工夫がある。これらによって、高齢者自身の意思表現を刺激する工夫、高齢者相互間の、また介護者 とのコミュニケーションの活性化を図るための工夫について具体的に紹介する。同時に上記のミッケルア ートの実際上の効果を評価、検証した調査結果を紹介し今後の課題を考察した。


    「Abstract」One of challenging tasks facing care staffs in service institutions is how to vitalize communication activity of the elderly. The so-called MIKKEL ART Program innovated by the author is a new tool which can be used to activate and facilitate such communications. The program is modeled after Japanese paper picture show, composed of pictures of traditional way of life and culture common and popular among the elderly generation. In this paper, the structure and characteristics of MIKKEL ART are outlined, and its effectiveness and possible future problems are discussed.



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